SaltSpring Island, BC, CANADA
SaltSpring Island, BC, CANADA ゆったりと穏やかに…アーティスト達が生活を楽しむ小さな島 ソルト スプリング アイランド                  オンタリオにいた頃から「いつかは行きたい」と思ってきたのがソルト スプリング アイランド。この島で生まれたダウン症の青年と音楽一家を綴った本に心を動かされて以来、憧れていた島だ。バンクーバーに引越し「いつかは…」と思っていたら何と、親しくなったS夫妻が突如その島に引っ越してしまった。日本からバンクーバー、さらにソルト スプリング アイランドへ…。鮮やかに人生を切り開いていくS夫妻はやはり、その美しい島を選んだのだ。「ここはどうしても行ってこよう!」。 §静かなフェリーで1時間半  バンクーバーがうす曇の金曜日、アメリカ国境に近いBCフェリー乗り場、ツワッセンから9.75ドル払ってフットパッセンジャーになった。ソルト スプリング島は、バンクーバーとビクトリアの間に点在するガルフアイランドの中で一番大きな島。といっても人口1万人、島のぐるりを回っても135キロだから2時間もあれば一周できる。  バンクーバー国際空港でレンタカーを借りるか、バスでツワッセンまで行ってBCフェリーに乗る。金曜日の夜や土曜日の直行便なら1時間半で着ける。私は2つの島に寄って3時間かかるフェリーで行ったが、これがまた何ともいえず心良い。海の青さと潮風が、慌しい日常生活を忘れさせてくれる。都会人には素敵なスローライフの始まりだ。甲板で熱いコーヒーを飲みながら、点在する島々とウオーターフロントに建つコッテージを眺めて退屈する暇もない。フェリーにメニューの豊富なレストランが完備しているのも嬉しい。 §スタジオツアーで質の高い作品に触れる  バンクーバーからのフェリーがつくのは、ロングハーバーだ。出迎えてくださったS夫妻と「スタジオツアー」をスタート。島に住むアーティスト達の生活を垣間見ることができるスタジオツアーは観光客の人気の的だ。先ずはハーバーからすぐのスタジオを訪れた。   そこは小さな陶器のギャラリー。店主で陶芸作家のゲリーさんは、日本のやきものの愛好家。30年前の日本訪問以来、日本の大ファンだそうで、石川県山中との縁が深く日本人作家の作品もある。庭を隔てて奥さんのお花のギャラリーがある。彼女は生け花の素養もあり、いかに自分達が日本を好きか、家を見てくれと言う。確かに回り廊下のある日本風の家屋、池に竹やもみじをあしらっている。  日本びいきの芸術家に出会うと、にわかに日本が誇らしくなるから不思議だ。さて、次に行ったのウルリケさんのテキスタイル・スタジオ。ウオーターフロントに面した小さなアート工房。たいへんな手間をかけて創り出すシルクやフエルトなど、現代的でとてもやさしい色使いの布や作品であふれている。どれも手触りが絶品の優れた芸術品だ。彼女は、マサチューセッツからの移住なのだとか。ショール一枚が300ドルほどだが、S夫妻はお洒落なフランス女性へのプレゼントにもこれ,と決めたぐらいである。彼女の作品を見るだけでも、この島のアーティスト達の質の高さがわかる。 §サタデーマーケットを楽しもう   スタジオツアーに登録されているものだけでも31軒。時間に余裕がない場合は、好きな陶器だけ、あるいは絵画だけなどに絞って見ていけばいい。アーティスト達は自分の作品がどうしてできるのか、アイディアがどこからくるのかなど丁寧に説明してくれる。まんべんなく見るよりも、一歩踏み込んで彼らの話を聞くだけで旅の価値は十二分にあるといえる。  最後に訪ずれたスタジオのダイアンはバンクーバーから移住。工房の壁にかかっていた緻密な織りものは、江戸火消しの衣装からアイディアをもらったという上着。ウオーターフロントの家での生活をご主人と楽しみつつ,32年間続けてきた織物を織る。夕食は裏の海から獲ったかにや魚。ガーデンからの野菜。羨ましいようなライフスタイルだ。「ここでは、PHDを持っている人が配達に来たりするの」と笑う。  ダウンタウンで開かれるサタデーマーケットも楽しい。4月から9月まで毎週土曜日に開かれるこのマーケットには、アーティストの作品から地元のクラフト、ローカルのジャムやパンなどの食品まで、たくさんのショップが並ぶ。20万人の観光客を集めるソルト スプリングの真髄だ。   §日本人にも縁の深い温暖な島  島には今、4家族ぐらいしか日本人は住んでいない。が、第二次大戦前には77家族もが住み、広大な土地を所有していたという。何しろ、日照時間は2000時間、降雨量は年間平均35インチ。バンクーバーアイランドに守られて強風も吹かず、雪は滅多に降らない。バナナが育つほどの温暖なところは日本人移民にとって大変住みやすいところだったのだろう。北部に塩の泉が湧き出すところから名づけられたとされる、静かで安全なこの島は、カナダ人にはもちろん、シアトルからフェリーやクルーザーでやってくるアメリカ人にとっても大変な人気。今や家や土地などの不動産人気もうなぎ上りだそうだ。   美しい島でアートや音楽に浸る。夏のバカンスには魅力的な コッテージやB&Bがたくさん用意されているが、人気のあるところは春のうちからいっぱいになるそうだ。友人夫妻も今年の8月にはB&Bをオープンさせたいと語る。唯一の日本語B&Bだ。そこを、日本文化の発信基地にもしたいと張り切っている。 (詳細は、www.yokoso.net )   次回は、ダンサーになったダウン症青年に会いにこよう。我が家のエンジェル、ダウン症の長男と一緒に…。(和田静江)